数字に強いというのは、数字の裏のストーリーをイメージできるということです。
言いかえると、数字からその内容を読み取ることができる、
もしくは、多くの数字からどの数字が大切かということを見つけることができるということです。
私もクライアントの方から
「どうして望月さんは、数字を見ただけで問題点が分かるんですか?」
と質問を受けたことが何度もあります。
私は会計士になったときから、このようなことができたわけではなく、
仕事を通じて少しずつできるようになりました。
そこで、どうして私がこのようなことができるようになったかを考えてみました。
会計士という仕事を通じて実際のビジネスの現場やお金の流れを数多く見ていると、
決算書のこの部分は、この位の数字になるのではないかというイメージが生まれます。
逆に言えば、工場などを見せていただくときは事前に資料を入手し、
工場にはいくらの機械が何台あるのか、機械は購入してからどの位たったのか、
従業員は何名いるのか、在庫はどの位あるのかというようなことをチェックしてから
実際の工場を見せていただきます。
そして、実際の工場を見ているときに事前に入手したデータと頭の中で照合することによって、
数字に対するイメージを作っていきます。
この作業を数多く繰り返したため、私の頭の中には「絶対音感」ではなく、
「絶対数感」のようなものがあるようです。
そこで考えました。このようなアプローチで会計を説明できないかと。
ビジネスで必要なとなるため会計や決算書の勉強を始める方は多いと思いますが、
残念ながら「会社の数字がよく分かるようになった!」という方は少ないようです。
それは別にみなさまが悪いのではなく、今までの勉強方法に問題があったのだと思います。
先ほどもお話ししたとおり、数字に強いということは決算書の数字を見て
実際のビジネスをイメージできることです。
ところが勉強をはじめようとして会計や決算書の本を読みはじめても、
会計の本には会計のことしか書いてありませんし、
決算書の本には決算書のことしか書いてありません。
そのため初心者の方は、ビジネスから会計、会計から決算書へと変換されるプロセスの間にある壁に阻まれて、ビジネスと数字を結びつけることができません。
この2つの壁は「ビジネス書」「会計」「決算書」の3種類の本を読みながら、
ねばり強く長い間勉強すれば超えることができますが、
普通の方はこの壁に阻まれて「会計はむずかしい」「会計はつまらない」と感じるところで終わってしまいます。
勉強のコツは最初に大ざっぱに全体像をつかんで、次に細かい部分を正確に理解していくことです。
この順番を逆にすると勉強すること自体がとても苦痛になってしまいます。
今までの会計の勉強法は、細かい知識を積み上げることによって全体像を理解しようというものでした。
このアプローチで会計を勉強するというのは回り道をしているようなものです。
そこで本書では、「経済のニュース」「会計」「決算書」の説明をバランス良く配分することによって
短い時間でこの壁を越えられるように工夫してあります。
もちろん1冊の本ですべてを語ることはできませんが、「会計は難しい」「会計はつまらない」
と感じている方が楽しみながら会計の全体像を理解できるようになっています。
例えば「甲子園球場の土地は、決算書ではなぜ800万円なのか」という謎を解きながら、
貸借対照表の基本が分かります。
また、「V字回復の謎を解く〜日産のリバイバルプランでは売上が1,100億円しか増えていないのに、なぜ利益が1兆円増えたのか」という謎をときながら、損益計算書の基本が分かります。
その他にもエンロン事件やライブドア事件などを通じて、会計とは何かがイメージできるようになっています。
興味のある方は、ぜひ目次をご覧になって下さい。
経済のニュースで話題になったことがいろいろと書いてあると思います。
それと一つお願いがあります。
読んでいて難しいと思ったところは、どんどん読み飛ばしてください。
会計の細かいことは分からなくても、各エピソードの背景にあるメッセージは理解していただけると思います。
本はすべてのページを読む必要はありません。
効率よく読むコツは、面白いと思った部分だけを読むことです。
そして、本当にあなたに役に立つ部分をじっくりと読むのが
一番美味しい読み方だと思います。
数字力が高まると現実がよく見えるようになります。
そして、現実がよく見えるようになると、望ましい未来も見えてきます。
この本を読むことによって、一人でも多くの方に「数字の裏にはこんなに面白いストーリーがあったんだ!」
と感じていただければ、この上ない喜びを感じます。
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